2012年5月1日火曜日

スウェーデンの温暖化対策〜なんでも挑戦してみよう - グローバルコラム - 環境goo


 日本では、温暖化対策として各主体で何ができるでしょうか。スウェーデンと比較しながら考えてみます。

 まず企業にとっては、技術的な対応が一番大切です。省エネ・省資源のための技術開発は、企業が一番得意とするところです。日本の企業は、環境技術への対応では最も進んでいると思います。それから、エコドライブや工場内の電気の使い方等々、いろんな形で日常の経営の中でも対応できます。金融界では、エコファンドをつくるなどの投資対応も可能です。環境に配慮している企業を応援するために、低利率の融資ということもできます。

 次に国民は何ができるでしょうか。私たちは、できるだけ温暖化につながるような消費行動を控えることができます。それから、政権選択という形で環境あるいは温暖化対策に積極的に取り組む政党を選ぶことが可能です。これからは環境問題で二大政党が具体案を提起し、それを国民が選択するという形で対応することも可能でしょう。


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 今や家計部門には1,400兆円を超える金融資産があります。金融資産を有効に利用する形でエコファンドを購入するなど、先ほどの金融機関と裏腹の関係にあるような行動も可能です。ドイツの場合には、個別企業が「環境税反対」というようなことを言えば、たちまち不買運動が起きます。日本では、日本経団連を隠れみのとして「環境税絶対反対」と言っている限りは、どこも不買運動にあわない。日本経団連のようなクッションになる団体があることによって、日本の場合には環境税導入への道が難しいという感があります。

 次に、政府には何ができるでしょうか。温暖化が危険なレベルに達した場合の対応としては、もちろん法律による環境規制ということが非常に重要です。それから、環境税、排出権取引などの経済的手法の導入もあります。さらに、環境関連の投資を支援するということも可能です。例えば、公共投資をする場合にも、リサイクル素材の積極的な利用を義務づけるなどの動きがあります。また脱化石燃料への技術支援のための補助金をつけるなどということも、政府が直接的にできる政策手段です。


技術はconvenionalエネルギーにどのように関連しています

 政府に求められていることは何でしょうか。脱化石燃料社会への明確なビジョンの提示です。日本は京都議定書を批准し、2012年までに1990年比で6%温室効果ガスの削減をしなければなりません。その公約を実現するために政府は、日本をどのような方向に誘導していくか、どのような政策を実施するのかなどのビジョンを提示することが必要です。スウェーデンをはじめヨーロッパ諸国では、まず脱化石燃料社会への明確なビジョンが提示されています。

 ところが日本では、各経済主体が2012年までに削減すべき温室効果ガスの割り当て計画を提示するだけで、政府のリーダーシップが見えません。スウェーデンの場合には脱化石燃料社会をつくるためには何が必要かという議論が最初にあって、そのために環境税導入が必要だという明確な政府の判断があり、そこからスタートしています。


原子力発電が分解するためにどのくらいの時間がかかるのでしょうか?

 次に「環境規制は企業の競争力を強化させるというのは本当か」という問題です。日本の自動車メーカーは、1970年代に日本版マスキー法(排ガス規制)を克服し80年代以降の世界市場を席巻し、今日に至っています。アメリカの場合にはビッグスリーがロビー活動を展開して、マスキー法の実施時期を延期させました。新しい時代に対応できず、いまやGMを筆頭にアメリカの自動車メーカーは悲惨な状況にあります。企業にとっては規制を克服するのは大変なことですが、それを克服すれば、新しい競争に打ち勝つ条件がつくれます。

 もう一つの例として、トップランナー方式で日本のデジタル家電の競争力が強まったことがあります。省エネ法の改正で、市場に出ている省エネ製品の中で最も優れているもの以上の機能をもつ製品を開発し、市場に出すことが定められました。この法律に従って日本の電機メーカーはデジタル家電の開発に全力投球しました。


 スウェーデンは、1990年の初めから環境税の導入に踏み切っています。90年を100とすると、温室効果ガスの排出量は横ばい、最近では100を少し下回っています。それに対してGDPは、最近では100を大きく越え、120に達しています。経済成長はしても、温室効果ガスの排出量は増えない。すなわち、環境と経済が両立していることがわかります。

 スウェーデンは寒い国ですから、暖房や給湯にかなりのエネルギーが必要です。そのエネルギー源として、79年までは100%石油を使っていました。第2次石油ショックを契機に、エネルギーを自前で調達しようという反省が巻き起こり、国内で調達できるバイオマスへの転換を図りました。バイオマスは主に木質バイオマスです。スウェーデンには森林が豊富にあります。80年代以降、石油の比重が低下し、バイオマスの比重が大きくなっていきました。90年くらいまでは主としてバイオマスの普及にさまざまな補助金を出していました。木質バイオマスをストーブで使う場合には、家庭のストーブ購入費を国で半分補助する制度も導入しました。


 また、スウェーデンでも、輸送セクターの温室効果ガスの削減が悩みのタネでした。それに対して現在、いくつかの取り組みをしています。一つは、化石燃料に対する環境税の導入です。

 まず、エネルギー税と炭素税の導入で化石燃料の消費を抑制することを基本対策にしています。これに加えて、バイオ燃料に対する免税措置を2008年まで実施しています。この結果、スウェーデンの普通自動車のほとんどには、エタノールが5%含まれているガソリンが使われています。

(2006年3月18日東京都内にて)



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